田坂広志

「知性」と「知能」は、何が違うのか? 実は、この二つは、全く逆の意味の言葉なのです。端的に、この二つの言葉の定義を述べましょう。 まず、「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力のことです。例えば、世の中には「知能検査」というものがありますが、この検査は、正解の有る問題を数多く解かせ、いかに迅速に、正解に到達できるかを測るものです。すなわち、「知能」とは、まさに、「答えの有る問い」に対して、速く、正しい答えを見出す能力に他ならないのです。 そして、言うまでもありませんが、現在の中学、高校、大学などの入学試験で測られるのは、この意味における「知能」であり、現在の「学歴社会」において受験競争を勝ち抜いてきた「高学歴」の人間とは、この意味での「知能」が高い人間のことに他なりません。 これに対して、「知性」とは、この「知能」とは全く逆の言葉です。二つ並べて述べましょう。 「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。 「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。 すなわち、「知性」とは、容易に答えの見つからぬ問いに対して、決して諦めず、その問いを問い続ける能力のことです。ときに、生涯を賭けて問うても、答えなど得られぬと分かっていて、それでも、その問いを問い続ける能力のことです。